脂質異常症

脂質異常症とは

脂質異常症(高脂血症)とは血液中のコレステロール、中性脂肪が高くなる疾患です。動脈硬化が進むため、脳梗塞や心筋梗塞など大きな病気につながるリスクが高まります。

LDLコレステロール 140㎎/dl以上 高LDLコレステロール血症
120~139㎎/dl 境界域高LDLコレステロール血症
HDLコレステロール 40㎎/dlっ未満 低HDLコレステロール血症
トリグリセライド 150㎎/dl以上(空腹時採血) 高トリグリセライド血症
175㎎/dl以上(随時採血)
Non-HDLコレステロール 170㎎/dl以上 高non-HDLコレステロール血症
150~169㎎/dl 境界域高non-HDLコレステロール血症

コレステロール

コレステロールは細胞膜、神経、性ホルモンやコルチゾール、ビタミンDなどの素となる大切な物質です。食事から2割ほど、あとの8割は肝臓で作られます。

コレステロールが高いと動脈硬化が起き、動脈硬化が進むと脳梗塞や心筋梗塞など重篤な病気のリスクが高まります。心筋梗塞と脳梗塞はがんに次いで2番目に多い死亡原因です。

LDLコレステロールは肝臓から全身にコレステロールを届ける状態。HDLコレステロールは余ったコレステロールを回収し肝臓に戻る状態のことを言います。

コレステロールが上がる原因

細胞の表面にはLDLコレステロールの受容体があり、ここにLDLコレステロールが結合して細胞にコレステロールを受け渡します。このLDL受容体に異常が起こると細胞内にコレステロールを渡せないため血液中にLDLコレステロールが余ることになります。異常は酸化ストレス(活性酸素)によるものです。

※家族性にコレステロールが高くなってしまう疾患がありますが、これは LDL受容体遺伝子の異常で細胞にうまくコレステロールを渡せないことが原因で起こります。

閉経後の女性はエストロゲンが低下するとLDLレセプターの数が減ります。甲状腺機能が低下する場合も同様にレセプターの数が減るため LDLコレステロールが高くなります。男性ではテストステロンの低下がコレステロール代謝を低下させます。(筋トレすると改善します)

細胞内のコレステロール濃度が低下すると足りてないと判断し肝臓での合成が高まるため(これをフィードバックと言います)コレステロールがさらに高くなってしまうのです。

本当に悪いのは超悪玉コレステロール

動脈硬化の本当の原因は「酸化したLDLコレステロール」です。

酸化したコレステロールをsmLDLコレステロールと言います

ただLDLコレステロールが高いだけでは動脈硬化は起こりません。このsdLDLコレステロールが血管壁に侵入し動脈硬化の原因となります。

酸化したLDLコレステロールは細胞にコレステロールを渡すことができなくなるので細胞内のコレステロール濃度が低くなるため肝臓で合成が進み、さらに血中のLDLコレステロールが増えていきます。
加齢に伴い抗酸化力が低下し、ホルモンの減少などと重なってコレステロールが増え動脈硬化も進んでいきます。

※sdLDLコレステロールは保険では測定できませんが、コレステロールが高いけどどうしたらいいのかわからないと言う場合は是非測定をお勧めします。当院では自費でsdLDLコレステロールを測定しております。 検査料金3,000円(税込) 

中性脂肪

中性脂肪は3つの脂肪酸がグリセオールと結合している状態で、おもにエネルギーの備蓄の状態です。糖質由来、脂質由来のどちらも余ったエネルギーは中性脂肪の形に変換されて体に蓄積されます。皮下脂肪や内臓脂肪の中身は中性脂肪です。食事から得られたカロリーはおよそ2時間で消費されます。それからは肝臓や筋肉に蓄えられたグリコーゲン(糖のかたまり)を使い、グリコーゲンがなくなると中性脂肪がエネルギーとして使われます。ちなみに心臓は中性脂肪の構成要素である脂肪酸でうごいます。

中性脂肪が上がる原因

「脂肪」というネーミングから脂っこい食事が原因と考えられがちですが、多くは「糖質のとりすぎ」が原因です。人間はタンパク質と脂質は腸の吸収限界があるため一定異常の脂質は血液中には入れません。ですが、糖だけは無尽蔵に血液中に入ることができます。高血糖は体にダメージがありますので大量のインスリンが糖を中性脂肪という安全な形にします。

急激に増えた中性脂肪は皮下脂肪になりにくく、内臓脂肪として蓄積されます。この内臓脂肪がとても悪い脂肪で様々な老化物質を放出するため老化が進み生活習慣病が進んでいきます。

脂肪肝も内臓脂肪の一種で、肝臓に脂肪が貯まると肝臓の機能が低下します。タンパク合成や解毒といった大切な機能が低下するため新陳代謝が低下しどんどん老化が進みます。血管が老化すると動脈硬化、高血圧が出てきます。

肝臓脂肪はインスリンの効き目も低下させます。これを「インスリン抵抗性」と言います。多すぎるインスリンは体に炎症を起こしたり、さらに脂肪肝が進み、酸化ストレス源となり得ます。さらに発癌性も高まります。

コレステロールをさげる薬

スタチン系製剤

肝臓でのコレステロール合成を阻害する薬です。
LDLコレステロールの合成を低下させることによって相対的に酸化したLDLコレステロールも減ることから動脈硬化、その後の血管イベントの発生率を下げています。
コレステロールは前述のように生命にとってなくてはならない物質ですから必要十分量を細胞に届けなければなりません。近年コレステロールが低いほど寿命が短くなることが分かっています。コレステロールが足りないと細胞の機能障害や発がん率が高くなるからです。

小腸コレステロールトランスポーター阻害剤

小腸でコレステロールの吸収を抑える薬です。
前述のスタチン系製剤が使用できない場合や効果不十分な時に併用されることが多い薬剤です。

ビタミンE

古くからコレステロールを下げる薬剤として用いられて来ました。ビタミンEはおもに脂質の酸化を防ぐ役割がありコレステロール、細胞膜の酸化を防ぎコレステロール代謝をスムーズにすると考えています。

中性脂肪を下げる薬

ω3系不飽和脂肪酸

EPA、DHAといった青魚の油であるω3系不飽和脂肪酸は中性脂肪を低下させることが知られています。

フィブラート系

肝臓での中性脂肪合成を抑制する薬剤です。LDLコレステロールを下げる作用も有します。

脂質異常症に対する生活習慣改善

最近まで(今でもたまに見受けられますが)コレステロールの多い食事を制限する指導が一般的でした。「お肉や卵はいけない」と。現在ではこればはっきりと否定されています。逆にお肉や卵は長期的にはコレステロールを下げるという報告もあります。

体を錆び付かせる食事習慣

糖質の摂りすぎ

糖質の多い食生活はAGE(終末糖化産物)を増やし、酸化ストレス源となります。食後の血糖値が高いとインスリン分泌が過剰になりさらに酸化ストレス源となります。特に避けたいのは果糖ぶどう糖液糖です。

酸化したアブラ

高温調理した食事にはトランス脂肪酸や過酸化脂質が多く含まれます。また安価な植物油は酸化もさることながら炎症を引き起こすω6脂肪酸を多く含むため避けましょう。
青魚に含まれるEPAやDHA、亜麻仁油やエゴマ油などに含まれるω3脂肪酸は炎症を抑える働きがありますが、酸化しやすいため熱を加えずに使用します。オリーブオイルやココナッツオイルは酸化に強い油でお勧めです。

体を錆び付かせる他の生活習慣

睡眠

眠りのホルモンと言われる「メラトニン」は睡眠を誘導するだけでなく、強力な抗酸化物質でもあり、寝ている間に体内の抗酸化に活躍します。夜更かしをして十分にメラトニンが出ないと翌朝まで酸化ストレスを持ち越すので控えましょう。12時前にはベッドに入ってスマホを見ないようにします。

運動

ウォーキングなどの負荷の低い適度な運動は抗酸化酵素の活性を高めます。

ストレス

ストレスは活性酸素を増やします。やはりストレスは万病の元なのです。ストレス源から逃れられない場合は瞑想などを利用するといいでしょう

体を錆から守る

上記の錆び付く生活習慣を減らし、さらに錆から体を守るために下記のような対策をお勧めしています。

抗酸化物質の摂取

食事・運動など生活習慣は大切ですが、忙しい日常でなかなか気を使うことが難しいとおもいます。抗酸化物質としてはビタミンC、ビタミンEを代表に様々な抗酸化物質がサプリメントとして手に入ります。当院でも薬をやめたい、薬の治療に疑問がある方には抗酸化サプリメントをお勧めしております。

サプリメント

 

禁煙・適度な飲酒

喫煙は活性酸素を体内に取り入れているようなもので、酸化ストレス源の王様です。百害あって一利なし。また過度のアルコールも活性酸素を産生します。飲むなら抗酸化物質の多い赤ワインがお勧めです。

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